« 核の左方移動 | トップページ | 肺高血圧症とは »

2010年4月 2日 (金)

高比重マーカインは要注意

 仰臥位では,脊柱の生理的弯曲は第三腰椎付近で最も高く第五胸椎付近で最も低いため,第三腰椎より頭側に入った高比重液は自然と第五胸椎レベルまで流れ込むためです.

ちなみに.等比重液は,脳脊髄液の中を拡散して拡がるため,体位にあまり関係せず,穿刺部位周辺の両側に効いていきます.高比重液は重力に従って拡がるため,下肢や鼠径ヘルニアの手術で,側臥位のまま置いておき下側に強く効かせることもあります.しかし,両側に効かせたい場合は,すみやかに仰臥位とします.

こうした理由により、高比重液では特に循環動態や麻酔範囲に注意が必要です。
麻酔の拡がりは30 ~ 60 分続き,高比重液では第三腰椎を越すとすみやかに上行しますので循環動態や麻酔範囲をこまめにチェックしましょう。

なお、細い神経の交感神経は,痛覚神経より広範に両側性に遮断されるため,循環系の抑制をきたします.特に高齢者や出血などで循環血液量が減少している患者では,影響が大きくなります.麻酔範囲が下位胸椎までの場合は,下肢や消化管への交感神経が遮断されます.よって,血管床が大きく拡がった結果,相対的な循環血液量不足となり,血圧低下と反射性の頻脈を起こします.この対処には,輸液と,塩酸フェニレフリン,塩酸メトキサミン,塩酸エフェドリンなどの血管を締める昇圧薬が有効です.引き続いて,第五胸椎まで麻酔範囲が広がると,心臓への交感神経が遮断され,心機能低下による血圧低下と徐脈が起こります.この徐脈傾向を,昇圧薬や輸液による血圧上昇に伴う頻脈の改善と誤解しないようにしましょう.その対処には塩酸エフェドリン,塩酸ドパミンなどの強心作用のある昇圧薬や硫酸アトロピンが必要です.また,中位胸椎レベルまで麻酔域が達すると,肋間筋の麻痺によって呼吸パターンが胸式から腹式に変わる違和感から,呼吸苦を訴えることがあります.頭を下げた体位を続けた場合は,麻酔域が頸椎レベルまで達し横隔神経麻痺による呼吸停止の可能性もあります.よって,上肢のしびれや発声困難を認めたら厳重な注意が必要です.麻酔範囲の上行を抑えるために頭を上げる場合は脳灌流圧の低下に注意が必須です.麻酔範囲の拡大は30 ~ 60分続くため,その間は慎重な観察が
必要となります.

|

« 核の左方移動 | トップページ | 肺高血圧症とは »

使用上の注意」カテゴリの記事

臨床医学系」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1253618/34045662

この記事へのトラックバック一覧です: 高比重マーカインは要注意:

« 核の左方移動 | トップページ | 肺高血圧症とは »